人手不足が深刻な2号警備の現場では、自社の隊員だけで必要人数を確保できず、協力会社や知り合いの警備会社から隊員を「応援」として借りることが日常的に行われています。しかし、この応援手配の方法を誤ると、労働者派遣法違反(違法派遣)として営業停止処分を受けるリスクがあります。
本記事では、応援と違法派遣の法的な境界線を明確にしたうえで、合法的な再委託の手続き、処分を受けた場合の影響、そしてシステムを活用したリスク管理の方法について解説します。
労働者派遣法第4条では、警備業務が労働者派遣の適用除外業務として明確に指定されています。その理由は、警備業法の仕組みにあります。
警備業法では、警備員に対する指揮命令や教育訓練の責任はすべて雇用元の警備業者が負うと定められています。一方、労働者派遣では、派遣先の企業が労働者に対して直接指揮命令を行います。この2つの制度は指揮命令系統の構造が根本的に相容れないため、警備員を他社の指揮命令下で働かせること自体が法令違反となるのです。
つまり、たとえ当事者間で「派遣」という認識がなくても、実態として他社の警備会社の指揮命令下で隊員が業務に従事していれば、それは違法派遣に該当する可能性があります。
協力会社から隊員を借りること自体は違法ではありません。問題は、その手続きと実態が「再委託(業務委託)」として適正に行われているかどうかです。以下のようなケースでは、形式上は応援であっても実質的に違法派遣と判断されるリスクが高まります。
警備業法第19条では、警備業務の委託・再委託を行う際、「契約締結前」と「契約締結時」の2回にわたる書面交付が義務付けられています。忙しい朝に電話一本で「今日一人お願い」と依頼し、書面を交わさないまま隊員を現場に入れるのは、法令上認められません。たとえ長年の付き合いがある協力会社であっても、案件ごとに書面交付の手続きを踏む必要があります。
適法な再委託であれば、現場での隊員への指揮命令権は再委託先の警備会社に帰属します。ところが現実には、応援隊員に対して自社の管制担当者が直接「ここに立って」「この時間に移動して」と指示を出しているケースが見受けられます。この実態は、労働者派遣法が禁じる「派遣先の指揮命令下での就労」に該当します。
応援隊員に自社のユニフォームを着用させ、自社の社名入り装備を持たせて現場に出す行為は、違法派遣の推認証拠になるだけでなく、警備業法第16条第2項(服装届出義務)に対する独立した法令違反を構成します。警備業者は使用する制服の色・型式・標章(ワッペン等)を管轄の公安委員会に届け出る義務があり、警備員は自身が所属する会社の届出済み制服のみを着用しなければなりません。他社所属の応援隊員に自社の制服を着せた場合、応援元・応援先の双方が服装規定違反に問われ、指示処分の直接的な原因となります。
警備員の違法派遣が発覚した場合、派遣した側(送り出した会社)と受け入れた側(使った会社)の双方が行政処分の対象になります。処分の内容は、違反の程度や回数に応じて段階的に重くなります。
最も軽い段階の処分です。再発防止策の策定と報告が求められます。なお、指示処分については、過去3年以内に別の指示処分を受けた履歴がある場合、または過去5年以内に営業停止等の処分を受けた履歴がある場合に限り、公安委員会のウェブサイトに社名と違反内容が公表されます。初犯かつ他の処分歴がなければ即座にWeb公表されるわけではありませんが、一度処分歴がつけば次の違反時に公表対象となるため、油断は禁物です。
違法派遣の典型事案では、送り出し側・受け入れ側の双方に7日から14日程度の営業停止処分が科されるのが通常です。営業停止期間中は新規の警備契約を受注できず、既存の契約も履行できなくなります。その結果、元請けゼネコン等からの出入り禁止や契約解除に発展し、停止期間以上の売上損失を被る事態になりかねません。
悪質性が高い場合や繰り返しの違反が認められた場合には、警備業の認定そのものが取り消されます。なお、令和6年4月施行の改正警備業法により、従来の物理的な「認定証」は廃止され、現在は「標識」の掲示制度に移行しています。そのため現行法では「認定証の返納命令」ではなく「認定の取消し」が正式な処分名称です。取消し後5年間は再認定を受けることができないため、実質的な廃業に等しい処分です。教育実施簿の虚偽記載と併せて摘発されるケースでは、この段階に至る可能性も否定できません。
営業停止処分以上の行政処分を受けた場合、各都道府県の公安委員会ウェブサイトに社名・違反内容・処分内容が、処分日から起算して3年間にわたって掲載されます。インターネット上に処分履歴が残るため、新規の取引開始時にも信用調査で発覚し、商機を逸する要因となります。
人手不足のなかで協力会社との連携は不可欠です。問題は応援の行為そのものではなく、手続きの不備にあります。以下の手順を踏めば、法的に適正な再委託として応援手配を行えます。
協力関係にある警備会社との間で、再委託に関する基本契約を事前に締結しておきます。警備業法第19条に基づき、契約締結前の書面(重要事項説明書)と契約締結時の書面(契約書)の2段階での交付が必要です。緊急時にも書面交付が省略されることはありません。
再委託先の隊員に対する現場での指示は、再委託先が任命した責任者を通じて行います。自社の管制担当者が再委託先の隊員に直接指示を出す運用は、たとえ業務効率のためであっても避けるべきです。現場での役割分担と指揮系統をあらかじめ文書化しておくことが、有事の際の証拠にもなります。
再委託先から来る隊員が、配置予定の現場で求められる資格(交通誘導警備業務検定合格証など)を保有しているか、事前に確認する必要があります。無資格者を配置すれば、違法派遣とは別に配置基準違反の処分も加わり、事態はさらに深刻化します。
応援手配に関する法的リスクを構造的に低減するために、警備管制システムの活用が有効です。
再委託先の隊員についても、資格情報・有効期限・教育実施状況をシステム上で一元的に管理します。配置画面上で「この現場には検定合格者が必要」という条件と、協力会社の隊員の資格保有状況を自動照合できれば、無資格者の誤配置を未然に防げます。
再委託が発生するたびに、契約に必要な書面をシステム上で発行・保管する仕組みがあれば、「書面交付を忘れていた」という事態を防げます。書面の発行履歴が電子的に残るため、公安委員会による立入検査時にも速やかに証跡を提示できます。
どの現場にどの会社の隊員が配置されているか、その現場の指揮命令者は誰かをシステム上で記録・管理します。再委託先の隊員と自社隊員の所属を明確に区分した配置記録を残すことで、万が一調査が入った際にも「自社の指揮命令下で他社の隊員を使っていた」という誤認を防ぐことができます。
警備会社間の「応援」は、人手不足を乗り越えるために欠かせない手段です。しかし、再委託の書面交付を怠ったり、指揮命令系統が曖昧なまま運用したりすれば、それは違法派遣として双方に営業停止処分をもたらすリスクになります。
コンプライアンスの徹底は、会社を守るための経営判断そのものです。協力会社との応援手配を日常的に行っている警備会社ほど、管制システムによる隊員情報の一元管理と書面の電子化を検討する価値は大きいといえるでしょう。
警備会社の管制業務の課題は、会社の規模によって大きく異なります。現場数や人員が増えるにつれて、管理の方法や負担のかかり方も変わっていきます。
そのため、システム選びも機能の多さではなく、自社の規模に合った課題を解決できるかどうかで考えることが重要です。
当メディアでは、規模ごとに異なる管制業務の課題を軸に、小規模・中規模・大規模それぞれに適したシステムを紹介しています。
ここからは、警備管制システムの選び方を踏まえたうえで、各規模の状況に対応でき、
業務効率化や負担軽減を実現するおすすめの警備管制システムとおすすめの理由をご紹介します。
30人未満の
小規模な警備会社には
| 月額料金 | 27,500円〜 |
|---|---|
| 初期費用 | 有 ※直接お問い合わせください |
30〜300人の
中規模な警備会社には
| 月額料金 | 49,500円※2 (30人の場合: 16,500円) |
|---|---|
| 初期費用 | 110,000円 |
301人以上の
大規模な警備会社には
| 月額料金 | 301人以上の料金について記載がありませんでした |
|---|---|
| 初期費用 | 110,000円 |